効果の根拠となる資料
育毛剤にメスを入れたガイドライン
現在ではさまざまな育毛剤が販売されるようになりましたが、あまりにも多すぎるためどれを買えば良いのか分からなくなるのは自然なことです。どの育毛剤にも耳慣れない化学物質や○○エキス配合と書かれていますが、その効果を判断することは難しいといえます。
そこで育毛剤の成分を評価するひとつの指標として利用したいのが、日本皮膚科学会が公開している「男性型脱毛症診療ガイドライン」です。このガイドラインは科学的根拠の疑わしい育毛剤成分が広まっている現状を懸念して、日本皮膚科学会と毛髪科学研究会の共同研究により作り出されました。どの育毛剤を選んだら良いか分からない場合は、このガイドラインに記載されている成分を参考にしてみると良いでしょう。
区分けされた5つのレベル
ガイドラインでは対象となる成分の効果の根拠となる論文を集め、信憑性の高いものから順番に推奨度レベルを定めています。
- A:行うよう強く勧められる
- B:行うよう勧められる
- C1:行ってもよいが根拠は十分でない
- C2:根拠がないので勧められない
- D:行わないよう勧められる
この推奨度レベルを見る限り「A・B・C1」までなら効果が期待できそうです。また「C2」に分類されるものはいまだ根拠が少ないだけで、もしかしたら効果があるかもしれません。なお「D」のものは使わないのが無難です。
20代からでも発症するAGAに向けたガイドライン
このガイドラインは早い方では20代から発症する男性型脱毛症、通称AGAに効果があるとされている成分について検討しています。AGAは男性ホルモン由来の脱毛症で、中高年ではなく20代からでも発症するという特徴をもつ症状です。
加齢による脱毛とはメカニズムが異なるので、改善するには専用の対策が必要となります。もしこれまで育毛対策をしても効果がなかったとしたら、AGAの可能性を疑いましょう。
AGAに効果のある成分が限られている中で、こうしたガイドラインが策定されているのは有意なことです。医薬品ではなく医薬部外品の市販薬からAGA対策ができれば画期的なことと言えるでしょう。なお自分がAGAかどうかはAGAクリニックで診断してもらえば判明するので、不安な方は訪ねてみると良いかもしれません。
効果の高い2つの医薬品成分
クリニックで処方されるもの
ガイドラインでレベルAに指定されている成分は「ミノキシジル」と「フィナステリド」の2つです。いずれも医薬品として指定を受けているもので、基本的にはAGAクリニックで処方される形で入手することができます。ただそのうちミノキシジルに関しては市販されている育毛剤の一部に配合されているので、まずはこれらの成分について見ていきましょう。
フィナステリドの強力な効果
AGAは男性ホルモンのテストステロンが5αリダクターゼという還元酵素によってジヒドロテストステロンとなり、ジヒドロテストステロンが育毛を阻害する因子TGF-βを生み出して、受容体のFGF-5を刺激することで進行していきます。
フィナステリドは、元凶となる5αリダクターゼの働きを抑える薬です。国内の臨床試験では改善効果が58%以上に認められているとのこと。ただ服薬を中止すれば再度脱毛は進行してしまいます。
またフィナステリドは抜け毛予防にも効果的です。5αリダクターゼが働きさえしなければ脱毛因子のTGF-βを抑制できるので、まさに抜け毛予防のための薬といえるでしょう。生やすのではなく抜けることを抑える抜け毛予防としての力を発揮する薬です。
また医薬品だけあって副作用も強く、服用者の2.9%に性機能障害が見られたり、女性が服用すると胎児の生殖器に異常が見られるケースもあるとのこと。フィナステリドはAGAの原因に強力に作用しますが、副作用も強いのです。
ミノキシジルは育毛剤に配合されることもある
血圧降下用の薬として開発され、のちに発毛効果が認められたミノキシジルにも効果が認められています。この成分は外用薬として市販の育毛薬にも採用されている製品が存在し、かつ副作用の危険性も少なく有用です。
毛の根本にある毛乳頭細胞を刺激し、毛の成長因子を増加させるという作用をもっています。とあるメーカーの研究データによると、使用から4週では主だった効果は見られませんが、8週以降になると顕著な効果が得られるということです。
まれに副作用が発生することもあり、血管拡張に伴う頭痛やめまい、胸痛などが起きるかもしれません。もちろんそうした症状が出た場合には使用をやめましょう。内服薬よりは安全ではありますが、強い薬であることには注意が必要です。
市販薬に配合されている3つの成分
全てC1に分類されている
ガイドラインに記載されているフィナステリドとミノキシジル以外の成分はC1とC2のレベルに分けられています。市販薬に含まれている成分の研究がいまだ進んでいないことが分かる状況です。ともかく、その中でも今回はC1に属する3つの成分について見ていきましょう。
t-フラバノン
西洋オトギリソウから抽出できる成分のアスチルビンには毛乳頭を覆う毛母細胞の増殖を促す作用があると目されています。とあるメーカーがこのアスチルビンを参考として作り上げたのがこのt-フラバノンです。
先述したAGAの脱毛へ到る過程の中でも、TGF-βの活性化を抑制するようにt-フラバノンは働きます。いわば脱毛のゴール地点直前で防ぐ役割といえるでしょう。実験によると53.1%の方々に改善効果が見られました。十分といえる実験数は存在しないものの、数少ない試験結果は存在し有意な結果を得ている成分です。
アデノシン
ヒトの細胞核内に存在するDNAや、DNAを元にしてタンパク質を作り出すRNAの構成要素のひとつがアデノシンです。ヒトにとって基礎的な物質なのでさまざまに活用されており、エネルギーの放出や貯蔵も担っています。
そんなアデノシンは毛乳頭に働きかけ、発毛因子であるFGF-7の生成を促進させてくれる効果をもっているのです。実験結果としては50名中16名に有意なものを認めている程度なので強力とは言えませんが、それでも30%ほどの改善効果がみられる形となります。
サイトプリン・ペンタデカン
2つとも異なる成分なのですが、育毛剤ではセットで配合されていることの多い成分です。サイトプリンは別名ペンタデカン酸グリセリドとも呼ばれており、毛乳頭に働きかけアデノシン3リン酸を増加させる効果が期待されています。
サイトプリンは6-ベンジルアミノプリンという名でも呼ばれており、発毛因子BMPの生産を促すとのこと。実験結果を見るとサイトプリンは47%、ペンタデカンは76%の有用な結果を得ています。
いずれも副作用が少ないので使用しても大丈夫
これら3つの成分はどれも副作用が懸念されるようなものではありません。特にアデノシンは私達の体に大量に含まれていますし、現に今もどこかで働いてくれているほどです。
医薬品は効果が強いのですが副作用も強く、安全性という面ではこれらの成分の方が優れているといえるでしょう。根拠は十分とは言えませんが、わずかに有意な実験結果が残されているので試す価値はあります。
迷ったらこれらの成分をチェックしよう
育毛剤を手に入れるときに迷ったら今回紹介した成分をチェックしてみてください。「t-フラバノン」「アデノシン」「サイトプリン・ペンタデカン」のいずれかが配合されていれば、ある程度の信頼度は担保されていると考えることができます。
特にAGAが原因の薄毛の方は、試しても損にはならないはずです。これらの成分は、解決の難しいAGAの原因に対処できる可能性があります。実験結果を考慮しながら育毛剤を選んでいきましょう。
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