薄毛といったら海藻
伝統的な噂
昔から、薄毛にはワカメやコンブ、モズクといった海藻類を食べることが対策になる、とまことしやかに言われてきました。この噂が生まれた原因は不明ですが、恐らくその見た目が毛髪を連想させたのかもしれません。実際のところこれらを食べたからといってそのまま髪の毛がフサフサになることは無いので、あくまでも俗説といえるでしょう。
健康的には良い食材
育毛剤ではなく食材としての話になりますが、海藻類は栄養が豊富な良い食材です。カルシウムや亜鉛、リンやヨードといった様々な栄養が含まれています。中でもヨードは、摂取することでヨウ素という栄養素を補給することができ、ヨウ素は甲状腺の活動を活発化し体内でのタンパク質の代謝を高める効果が期待できます。
健康的な体作りは健康的な頭皮作りへと繋がるので、海藻類を摂取することは良いことといえます。すぐに髪を生やす効果は認められないものの、髪を生やす下地作りとして海藻類を摂取するのはおすすめです。ただヨウ素を取り込みすぎると意欲の低下などの副作用が見られることもありますので、注意しておきましょう。
育毛剤としてはどうか
海藻類を食材ではなく育毛剤としてみると、2つの有効成分が確認できます。1つは「M-034」と呼ばれるもので、もう1つは健康成分として注目を集めている「フコイダン」です。果たしてこれらの成分が本当に効果のあるものなのか見ていきましょう。
M-034に迫る
天然のコンブエキス
M-034は正確には「北海道ミツイシコンブ由来エキス」となります。北海道の日高沖に自生している天然のミツイシコンブから抽出したエキスというわけです。M-034の効果としては、毛を太くしたり毛周期の中でも成長期を延長するほか、退行期へ移り変わる時期を遅延させるといった効果をもっていると主張されています。
ただこの効果を謳っているのは同成分を配合した育毛剤の公式サイト(TENSHINDO)のみなので、詳しいことは不明です。まずはこの公式サイトに掲載されている情報から吟味していきましょう。
無添加とM-034を添加した毛の比較
M-034の有効性の根拠となる実験は、培養液でのものとなります。無添加の培養液とM-034を10%配合した培養液にそれぞれ抜け毛を入れ、その経過を観察したわけです。それによると、外毛根鞘細胞の増殖を確認できたとのこと。「いったい外毛根鞘細胞とは何か」という話になるのでそのあたりを詳しく見ていきます。
毛の複雑な構造
毛の構造を説明するときに毛乳頭と毛母細胞の簡単なモデルで解説されることがありますが、これはあくまでも単純化した形であって、実際の形とは異なります。
実際は下から順に「毛乳頭・毛母細胞・メラノサイト・毛皮質・毛小皮・内毛根鞘・外毛根鞘・基底幕・結合組織性毛包」という形で構成されています。もう少し単純化すると「毛乳頭・毛母細胞・内毛根鞘・外毛根鞘・結合組織性毛包」となります。
M-034が成長させる外毛根鞘
実験の結果、M-034は外毛根鞘の増殖を確認できたと主張しています。この外毛根鞘は構造から見ると外側の細胞になるので、重要な役割を担っていないように思われるかもしれませんが、実際は育毛にとってかなり大事な役目を担っているのです。
外毛根鞘には「CD34陽性細胞」という毛母細胞の元になる細胞が含まれています。このCD34陽性細胞は細い髪になればなるほど少なく、毛の成長にとって欠かせないものと考えられています。この重要な外毛根鞘を成長させるわけですから、M-034は育毛成分として重要な働きをしているといえるでしょう。
詳しいデータの公開が待たれる
M-034が増殖させた外毛根鞘は、毛の成長にとって重要な要素です。ですが実験結果に関するデータが少ないため、開示して欲しいところです。培養液ではなく生体内ではどういった結果をもたらすのか、またどの期間どのぐらいのサンプルで実験を行ったのか、そうしたデータの公開が待たれます。
本当に外毛根鞘を増殖させるなら有効な育毛成分
実験結果と同じようにM-034が毛の外毛根鞘を成長させるのであれば、有効な育毛成分ということができるでしょう。CD34陽性細胞が増えれば毛母細胞も増加し、毛の成長に良い影響を与えてくれるはずです。
フコイダンに迫る
健康成分フコイダン
育毛剤の有効成分として含まれることのあるフコイダン。これも海藻を原料としています。ワカメやコンブ、モズクなどに含まれているヌルヌル成分がフコイダンです。
またフコイダンには様々な種類があり、それぞれに含まれる成分も異なっています。ただ共通している点として「硫酸化フコースを主成分としてもつ」という特徴があります。
なお種類には「F-フコイダン・U-フコイダン・G-フコイダン・L-フコイダン・GA-フコイダン・オキナワモズクフコイダン」が存在し、オキナワモズクフコイダンのみ、硫酸化フコースとウロン酸が結合したものとなっています。
硫酸化フコースとは
硫酸基と単糖類のフコースが組み合わさった物質で、硫酸基がヌルヌルの正体となります。これは炎症改善や免疫反応、血管新生といった様々な効果が期待されている物質です。
ただいずれも研究段階にあり、実際にヒトを対象とした臨床試験に乏しいというのが現状です。またフコイダンは多糖類であり、硫酸化フコースが数万ほど連なった形をしているので吸収しにくいという特徴があり、培養液内での試験結果がそのまま私たちの体に反映されるかどうかは分かりません。
育毛とフコイダン
例えば、トンガ王国に自生するモズクから抽出した成分リムベールが、育毛成分として利用されています。リムベールの効果を実証するためにマウスで実験を行った結果、他の対照群と比較して有意な結果を得ることができました。また培地における実験では、毛乳頭の細胞増殖率は、育毛用医薬品として名高いミノキシジルよりも効果の高い結果となっています。
同成分のヒトへの実験結果としては、高分子のまま投与したところ男性で70%、女性で92%もの改善結果が認められました。具体的には「毛が太くなった」「ハリやコシが出た」といったアンケート結果を集計しています。被験者の主観的な意見となってしまいますが、それでも実感として育毛効果を感じた人が多かった結果といえるでしょう。
また、ガゴメコンブフコイダンという函館近海に自生するガゴメコンブを原料としたものも研究されています。こちらもマウスで実験したところ、毛の育成に有意な結果が得られたとのことです。具体的には毛乳頭に存在する発毛因子FGF-7のタンパク質量がフコイダンを付与することによって上昇し、育毛に効果があるとみられています。
生体内で効果があるなら有効な成分
フコイダンも未だヒトを対象とした臨床試験は少なめですが、それでも有意な結果を示唆する実験結果を得ることには成功しています。もし生体内でも毛乳頭へ作用しFGF-7を活性化できるのであれば、有用な成分に間違いはありません。
期待できる海藻の効果
抜け毛予防とAGAの改善
年代を問わず20代からでも薄毛になる人には、男性型脱毛症(AGA)の疑いがありますが、M-034やフコイダンにはこうした20代の人に効果があるかもしれません。外毛根鞘やFGF-7へ働きかけるわけですから、20代でAGAを発症した人に効いてもおかしくないのです。
また抜け毛予防としても効果が期待できるでしょう。外毛根鞘が増殖すれば毛母細胞が多くなって強い髪を作り、抜け毛予防どころか黒々とした髪を手に入れられるはずです。
薄毛の原因に対抗する海藻の力
薄毛の原因は加齢やAGAなど様々なものがありますが、外毛根鞘の増殖やFGF-7の活性化は、まさにその原因に対抗する力といえます。例えばAGAは毛母細胞の増殖を抑制しようとするのですが、海藻の力はその抑制に対して正面からぶつかり合うのです。AGAの仕組みから改善するのではなく、正面対決で薄毛と対峙する方法といえるでしょう。
副作用の心配がないという魅力
フコイダンもM-034も、天然成分に由来するため副作用の心配がありません。育毛剤にも過剰摂取できるほどの量が含まれていないため、安心して副作用を気にせず育毛対策をしていけるでしょう。
このコラムが気に入ったら
ぜひ「いいね!」をお願いします♪
みんなに役立つ情報をお届けします。