研究により生まれる化学物質
育毛剤の成分は日々進化している
一般に販売されている育毛剤には、様々な成分が含まれています。トウガラシエキスを始めとした天然成分由来と思われるものから、今回扱っているカルプロニウム塩化物まで、様々なものが配合されている状況です。
確かに色々なものが入っているのは分かりますが、果たして「カルプロニウム塩化物」がどうやって髪の毛に作用してくれるのか、一見しただけではよくわからないというのが本当のところでしょう。もちろん他にもセファランチンやニコチン酸ベンジルといった耳慣れない成分も育毛剤に含まれることがあります。
こうした成分は日々生まれています。育毛の道は果てしなく険しいものなので、簡単に解決できるものではありません。研究者たちは日々、新しい成分を発見したり作り出すことに、心血を注いでいるわけです。そんな中で見出されたのがカルプロニウム塩化物となります。一体この成分はどういったものなのか、徹底的に追求してみましょう。
1973年に配合開始
カルプロニウム塩化物自体は、1968年から医療用医薬品としての承認を得て「フロジン液」という商品名で流通を開始しています。円形脱毛症の治療に効果がある薬で、あくまでも医薬品でした。
そこに目をつけたとあるメーカーが、カルプロニウム塩化物を1%配合した育毛剤を「一般用医薬品」として一般販売するようになります。一般用医薬品というのは薬剤師の許可を得れば購入できるというもので、薬効が高く副作用が懸念されるものの、処方箋なしに買えるという点が魅力です。市販されている育毛剤の中でも効果に期待がもてる形での販売形態といえるでしょう。
2004年に配合量が2倍になった
このカルプロニウム塩化物を配合した育毛剤は2004年に進化を遂げ、同成分を2%配合したものを販売するようになりました。単純計算で、既存の製品の2倍を配合できるようになったわけです。
さらに2015年にはスカルプケアを視野に入れた製品を開発し、リリースしています。また、この間に臨床試験を実施しその総数は849名にものぼるとのこと。育毛剤の世界では臨床試験を実施しているところも少なく、データの乏しい状況が続く中で、積極的な姿勢が見てとれます。
ともかくカルプロニウム塩化物は、この育毛剤メーカーにとって無くてはならない成分なのです。会社自体が長年中心に据えるほどの期待を背負った成分といえるでしょう。
主な用途は円形脱毛症の改善
血管を拡張する効果をもつ
カルプロニウム塩化物を5%配合した医薬品のフロジン液は、円形脱毛症の外用薬として処方される薬です。元々は円形脱毛症の薬として使われてきたものを育毛剤として使用している形となります。「円形脱毛症ではない薄毛の方にもカルプロニウム塩化物が効くのか」という疑問も湧きますが、その前にまずは円形脱毛症について見ておきましょう。
円形脱毛症というのは、実はまだ原因が判明していない脱毛症状です。一説にはアトピーや遺伝ともいわれていますが、中には精神的ストレスが原因であると主張するものもあります。この説によると、精神的ストレスを受けることで血管の収縮を司る交感神経が興奮し続けてしまい、髪の毛への栄養補給が滞り円形脱毛症を引き起こす、ということです。
「頭に血がのぼる」という言葉がありますが、むしろストレスを溜め込むと「頭に血がのぼらない」状態を作り出してしまうのです。こうしたときにどのような薬が役に立つかというと、それは血管拡張作用をもつ薬です。そしてカルプロニウム塩化物は何を隠そう、血管拡張作用を有しているのです。
円形脱毛症の患部にカルプロニウム塩化物を塗布することで、その部分の血管が拡張され血流量が増加します。すると血液に含まれている栄養が無事に毛髪へと行き渡るようになり、毛の成長が促進されて、円形脱毛症も治る、という流れになります。カルプロニウム塩化物は血管を拡張する薬として、円形脱毛症の解決に役立つ成分なのです。
重大な副作用の心配は無用
市販されている育毛剤よりも配合濃度の高いフロジン液で、副作用の参考にしてみましょう。フロジン液では副作用として、発汗やかゆみが現れる恐れがあると警告しています。また、まれに吐き気や顔面の紅潮、動悸などを招くことがあるかもしれませんが、これらの症状もあくまで「まれ」に起こるものです。
副作用の危険性については低いと考えておいて良いでしょう。より濃度の低いカルプロニウム塩化物を配合した育毛剤が原因で重大な症状をきたすことは、ほぼ無いはずです。といっても、万が一体調が悪いと感じたなら使用は止めておきましょう。なお、湯あがりの際には特に強く作用するので避けた方が無難です。
より詳しくカルプロニウム塩化物に迫る
副交感神経を刺激する
私達の体の活動は自律神経によってコントロールされています。自律神経にはアクセルの作用をもたらす交感神経とブレーキの役目を担う副交感神経があります。なお副交感神経を刺激するときには、アセチルコリンという神経伝達物質でやり取りを行っています。
アセチルコリンにはそれぞれムスカリン受容体とニコチン受容体という2つの受容体があり、アセチルコリン自体はどちらも作動させることが可能です。また、ムスカリン受容体にはムスカリン、ニコチン受容体にはニコチンがそれぞれ作用します。そしてカルプロニウム塩化物はまさしくこのムスカリン受容体を作動させる「ムスカリン性コリン受容体作動薬」なのです。
カルプロニウム塩化物はムスカリン性コリン受容体を作動させる働きをし、その結果、副交感神経が刺激され、塗布した部位の血管が拡張されるというわけです。
少し長くなりましたが、育毛剤に含まれているこの成分はこうした流れで育毛を促進してくれるのです。育毛剤の成分がどのような過程を経て実際の効果へ至るのかを知ると、安心して使えるようになるでしょう。
20代に発症したAGAにも効果が期待できる
20代から発症することもある男性型脱毛症、通称AGAにも、カルプロニウム塩化物が効くかもしれません。これは有効な育毛成分を検証した資料である、男性型脱毛症診療ガイドラインに掲載されているのですが、カルプロニウム塩化物の評価はC1となっています。C1というのは「十分な根拠こそないものの行うことを考慮してもよい」というもので、実際に実証結果を考慮した形です。
それによると30例の被験者による実験で「有効20%」かつ「やや有効60%」という結果が出ているとのことです。期待しても良い数値といえるでしょう。20代から薄毛になったとしても、血流の改善によりAGAへ一矢報いることができるかもしれません。
試す価値は十分にある成分
他の血管拡張作用のある薬より期待できる
育毛剤には他にも、天然由来成分をはじめとして血管拡張作用を期待できる成分が存在しますが、カルプロニウム塩化物はよりその作用を期待することができます。なぜなら同成分は、アセチルコリンを分解する酵素のコリンエステラーゼの活動を抑制してくれるからです。
活動を抑える物質の働きを抑えてくれるわけですから、より長く血管拡張状態を維持できる期待ができます。カルプロニウム塩化物は、血管拡張による髪の毛の育成において注目したい成分といえるでしょう。
抜け毛予防への期待
血行がよくなり髪の毛に栄養が補給されると、抜け毛予防が期待できます。抜け毛の原因の1つが血流ないし血管の不足による栄養の低下なので、カルプロニウム塩化物で血流を増加させることは抜け毛予防にとって良いことです。栄養を補給すれば、弱っていた髪を強くする事ができるかもしれません。
医薬品の成分だからこそ根拠がある
カルプロニウム塩化物は医薬品のフロジン液として長年使われてきた歴史をもちます。そのため様々な臨床データが集まっており、その効果はきちんと示されているのです。先ほど述べたように、私達の体の中でムスカリン性コリン受容体作動薬として働くということさえ分かっています。
確実に血管を拡張させて髪に栄養を届けたいのなら、カルプロニウム塩化物を配合した育毛剤を選ぶのは良い選択といえるでしょう。
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